「共済」と一言で言いますが、どこがどう違うのでしょうか。
共済の商品性を比較しました。
目次
共済団体の特色をまとめる
以前の記事で、共済の説明と、生命共済と生命保険の違いについて解説しました。
www.seimei-hoken.info
では、共済によってどういった違いがあるのか、見ていきたいと思います。
ここでは、4大共済を比較していきます。
4大共済は、以下の4つです。
- JA共済
- 全労済
- 都道府県民共済
- コープ共済
共済に加入するための「組合員」の位置付け
各協同組合によって、共済に加入するための組合員の条件があり、それぞれ少しずつ異なります。
JA共済以外は、共済に加入するために組合員になる必要があります。
組合員になるには100円〜1000円の出資金が必要ですが、少額ですし退会時に返還されるため、特に気にするほどではありません。
まとめると、下表のようになります。
協同組合 | 共済加入は組合員のみか | 組合への入り方 | 関連リンク |
---|---|---|---|
JA共済 | 組合員以外も加入できる | 不要 | *1 |
全労済 | 組合員のみ | 10 口(1,000 円)以上 | *2 |
都道府県民共済 | 同上 | 100円 | *3 |
コープ共済 | 同上 | 500円~1000円程度 | *4 |
扱っている商品一覧表
大まかに分類しながら、各共済団体で扱っている商品をまとめます。
共済団体 | 総合 | 定期 | 終身 | 医療 | がん | 三大疾病 | 養老 | 学資 | 介護 | 就業不能 | 年金 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
JA共済 | - | 定期生命共済 | 終身共済(一時払も) | 医療共済(引受基準緩和型も) | がん共済 | - | 養老共済 | こども共済 | 介護共済(一時払も) | 生活障害共済 | 予定利率変動型年金共済 |
全労済 | こくみん共済 | せいめい共済 | せいめい共済 | 総合医療共済、いきいき応援 | - | - | - | - | 総合医療共済介護プラン | - | ねんきん共済 |
都道府県民共済 | 総合保障型 | - | - | 総合入院型 | - | - | - | - | - | - | - |
コープ共済 | たすけあい | あいぷらす | ずっとあい終身生命 | たすけあい医療コース、ずっとあい終身医療 | あいぷらすがん特約 | - | 新あいあい | - | - | - | - |
※参考にしたサイトは、以下の通りです。
共済団体 | 参考サイト |
---|---|
JA共済 | JAのはじめて共済|JA共済 |
全労済 | 共済商品比較一覧 | 共済・保障のことなら全労済 |
都道府県民共済 | 全国生協連 |
コープ共済 | 商品ラインナップ|加入をご検討の方|コープ共済 |
共済と一口に言っても、取り扱っている商品がかなり異なることがわかります。
それぞれの共済団体の特徴については、この後で書きたいと思います。
割戻しについて
このあと各共済団体の商品について書いていきたいと思いますが、その前に、共済の掛金を考える上で外せない、「割戻し」について解説しておきます。
割戻しとは、支払った掛金のうち、共済の決算で余りが出たお金(剰余金と言います)が戻ってくることです。
共済の掛金を見る場合には、「割戻率」も合わせてみておくのが良いでしょう。
「割戻率」とは、掛金に対する割戻金の割合(割戻金÷掛け金)のことです。
それぞれの共済団体の商品について
それぞれの共済団体の商品の特徴についてコメントしていきます。
①JA共済
商品
4大共済団体で最も生命保険会社に近い、多様な商品ラインナップを持っています。
他の共済団体にあるような総合型の共済はなく、保障ごとの共済が用意されています。
加入者としては、よりフィットした共済を選べるという長所がありつつも、どう選んで良いかわからないという短所もあります(そのため、JA共済には「ライフアドバイザー」という保障設計や見積もりを作成してくれる専門家がいます)。
特に、以下の共済は、他の共済団体にない特徴的な共済です。
- がん共済の単品
- 養老共済、こども共済、一時払終身共済といった貯蓄性の強い共済
- 生活障害共済
わかりにくい商品がありますので解説しますが、細かいので不要な方は読み飛ばしてください。
カッコ内は、生命保険での一般的な名称です。
※養老共済(養老保険):共済期間(10年など)の後に満期共済金がある商品です。共済期間中は万一亡くなった際の保険金があります。満期共済金があるので、貯蓄目的で加入されることが多いです。
※こども共済(こども保険、学資保険):こどもの高校や大学入学に合わせて学資金が出る商品です。完全に貯蓄目的で、返戻率(払込む掛け金に対して学資金がでる割合)が勝負の商品です。
※生活障害共済:障害を持ったときにそれ以降の生活を支えるための年金が給付される商品です。
上記の商品を、共済メインで検討する場合は、JA共済一択です。
また、生命保険会社と比較しやすい商品内容になっているので、生命保険と比較して検討することもできます。
割戻し
2017年度決算によると、支払割戻金は1,003億円、受入共済掛金は4.6兆円でした*5。
単純に割り算すると、割戻率は2.2%です。
低いような気もしますが、貯蓄性の高い共済があるので、割戻率は低くなりやすい点には注意が必要です。
解説しますが、細かいので不要な方は読み飛ばしてください。
貯蓄性のないいわゆる掛け捨て型の共済と、貯蓄性の高い共済(こども共済や終身共済)では、掛け捨て型共済の方が割戻率は高くなりやすいです。
実際の数字を当てはめるとわかりやすいです。
掛け捨て型共済では、割戻率が20%などということも珍しくはありませんが、例えばこれが学資目的の子供共済に置き換えて考えた場合、割戻率20%とすると、つまり利回り20%という驚異的な商品が出来上がってしまいます。
貯蓄性商品と掛け捨て商品の割戻率を単純に比較しないよう注意が必要です。
割戻しについては、ディスクロージャに以下の記載があります。
利差・危険差の100%、費差の20%以上を契約者割戻準備金に積み立て、ここから割戻金をお支払いします。(JA共済ディスクロージャーより)
わかりにくいので解説しますが、これも細かいので不要な方は読み飛ばし推奨です。
①利差は、共済の掛け金を設定するときに想定した利回りよりも実際の資産運用の利回りが大きいことにより発生する剰余金(余ったお金)のことです。
②危険差は、掛け金設定時に想定した給付(死亡や病気、事故)よりも実際の給付が少ないことにより発生する剰余金のことです。
③費差は、掛け金設定時に想定した事業費(共済を運営するのに必要なお金)よりも実際の事業費が少なかったことにより発生する剰余金のことです。
つまり、「①②の剰余金については、利回りがよかった分と給付が少なかった分については、基本的には全額を割り戻しますよ」と言っているわけです。
決してJA共済が割戻しが少ないとか渋っているというわけではないということです。
②全労済
商品
大きくは以下の3つです。
- こくみん共済
- せいめい共済
- 総合医療共済
こくみん共済は、掛け金が60歳までは年齢によらず一定(1800円)で、60歳以降になると掛け金はそのままで保障額が減っていく、という仕組みです。
(移行タイプ | 共済・保障のことなら全労済より)
この仕組みは生命保険会社には見られませんが、共済では一般的です。
保障内容は、死亡から入院、手術など、広い範囲をカバーしています。
それ以外のせいめい共済と総合医療共済は、年齢や共済期間、保障金額によって掛け金が決まります。
こちらは生命保険に近い商品と言えるでしょう。
③都道府県民共済
商品
共済の種類は少なく、基本となるのは死亡と入院を保証する「総合保障型」と、入院への保障に特化した「入院保障型」の2つです。
それに加入年齢によって、こども型、通常、熟年型に分かれます。
掛け金は年齢によらず一定(全労済のこくみん共済と同じ仕組みです)で、保障額によって月1000円、2000円、4000円など、わかりやすい金額になっています。
年齢が上がると(65歳以上)、掛け金は同じで、加齢とともに保障額が小さくなっていきます*8(「熟年型」という名前になります)。
この仕組みもこくみん共済と同様です。
割戻し
運営する都道府県の共済によって異なりますが、2017年度の都民共済の割戻率は28.16%でした*9。
月掛金2000円に対して563円です。実質的な掛け金は、1437円となります。
偶然か、こくみん共済の1500円とかなり近く、100円も変わりません。
④コープ共済
商品
以下が主な商品です。
- たすけあい
- あいぷらす
- ずっとあい
- 新あいあい
(新あいあいは、扱っている協同組合が限定されています)
このうち、たすけあいは0~65歳まで掛金が一定です。
ベーシックコースと医療コースがありますが、月の掛け金は1000円〜4000円の1000円刻みでわかりやすいです。
保障内容は、死亡から入院、通院、手術など、広い範囲をカバーしています。
また、コープ共済には住宅災害に対する保障も含まれます。
65歳以降は「プラチナ85」という商品になり、掛け金は同水準で保障額(死亡保険金や入院日額)が減ります。
65歳以降は年齢によって保障額が変わることはなく、一定です。
こくみん共済は加齢とともに保障額が減っていきますから、この仕組みはこくみん共済や都道府県民共済とは異なります。
(プラチナ85|男性:保障内容と掛金|加入をご検討の方|コープ共済より)
残りの3つについて、表にすると以下の通りです。
あいぷらす | 医療特約付10年定期保険 |
---|---|
ずっとあい | 終身保険か終身医療保険 |
新あいあい | 5年満期金付き生命保険(医療特約付加可能) |
これらは、年齢性別によって掛金が変わります。
割戻し
コープ共済の割戻率は、生命共済(たすけあい)と定期生命共済(あいぷらす)は約22%、終身共済(ずっとあい)は約2%です(2017年度((http://coopkyosai.coop/about/work/pdf/annual_2018.pdfP67)))。
アニュアルレポートに割戻率表がありましたので抜粋します。
たすけあいの月2000円を例にとると、実質の掛け金は1560円となります。
ずっとあいは終身生命か終身医療ですので、掛け金が年齢によって変わらない「たすけあい」や、10年定期の「あいぷらす」より掛け金が大きくなりやすく、割戻率は小さく見えやすいことには注意が必要です。
なお、ずっとあいの割戻は終身医療にはある程度ありますが、終身生命に対する割戻はほとんどないと思われます(アニュアルレポートの同ページより)。
各共済団体についてまとめ
商品の種類と、割戻しに注目して各共済団体を見てきました。
以下にまとめていきます。
スポンサーサイト
JA共済は、最も生命保険会社に近く、共済の種類が多いです。
加入者としては、よりフィットした共済を選べるという長所がありつつも、どう選んで良いかわからないという短所もあります。
JA共済にしかない共済もあり、貯蓄目的や就業不能の保障を確保したい場合はJA共済は非常に有力です。
その他の3共済団体は、
- 死亡から入院・手術まで保障され、
- 掛金が年齢によって変わらない
いわゆる総合型の共済を持っています。
全労済はこくみん共済、都道府県民共済は総合保障型と入院保障型、コープ共済はたすけあい、です。
それぞれ割戻率は20%前後あります(年によって違います)。
全労済とコープ共済には、長期の共済もあります(都道府県民共済にはありません)。
全労済ではせいめい共済と総合医療共済、コープ共済ではあいぷらすとずっとあい、です。
長期の共済では、総合型のような20%もの割戻率にならないことが多いです。
終身共済では2%程度です。